技能実習制度と特定技能制度は、外国人労働者の日本での雇用を支援するために作られた制度ですが、具体的な違いについてきちんと理解しているという方は少ないのではないでしょうか。特定技能人材の採用前に知っておきたい、技能実習と特定技能の違いや、技能実習から特定技能への移行方法、移行のメリットとデメリットについてご紹介します。
技能実習と特定技能の違いとは
技能実習制度は、外国人労働者に日本の企業で技能を習得する機会を与え、特定技能制度は、日本において必要な技能や技能レベルを持った外国人労働者を受け入れることを目的としています。
技能実習制度では、企業が実施する技能について習得できますが、特定技能制度では、特定の職種に必要な技能について習得できます。また、特定技能制度には、技能実習制度よりも高度な技能を習得できる「特定技能1号」があります。
技能実習制度では、実習生に対して賃金が支払われますが、最低賃金に達しない場合があります。一方、特定技能制度では、日本国内の労働者と同等の賃金を支払うことが求められます。そのため技能実習生は特定技能に移行することでよりよい待遇での就労が可能となります。
技能実習制度では、実習期間が終了したあと、技能実習評価試験に合格すると、技能実習生としての資格が得られます。一方、特定技能制度では、職種ごとに必要な資格が定められており、外国人労働者はその資格を取得することが求められます。
技能実習制度では最長で3年間の滞在が可能となっていますが、特定技能制度であれば、最長5年間滞在が可能で再入国もできます。特定技能に移行すると技能実習では認められていない転籍・転職も可能になります。
技能実習から特定技能へ移行はできる?
技能実習制度の実習生は、実習期間終了後に帰国することが原則となっていますが、特定の条件を満たすと特定技能に移行できます。
介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の14分野が移行可能な特定分野です。
国内で人材確保が困難とされている分野が特定分野として定められています。
移行の条件と移行の方法とは
技能実習生が特定技能に移行するには、実習期間中に技能実習先の企業が特定技能制度に参加すること、実習生が特定技能制度で求められる資格や技能レベルを持っていること、特定技能制度において就労ビザの取得に必要な条件を満たしていること、といった条件を満たしたうえで申請手続きを行う必要があります。
技能実習生が技能実習2号を良好に修了していれば日本語試験が免除になります。移行のためには技能実習先の企業が移行支援協定を締結し、移行希望者が所属する実習機関や移行支援機関を通じて移行手続きを行います。
企業は特定技能外国人と雇用契約を締結し、1号特定技能外国人支援計画を策定、もしくは登録支援機関と委託契約を締結、契約締結前後に受入れ機関などが実施する事前ガイダンス実施、健康診断実施、在留資格変更許可申請を出入国在留管理庁に申請といった手続きを行います。
在留資格変更許可申請は手続きに2~3か月程度時間がかかることも覚えておくといいでしょう。
移行するメリット・デメリット
技能実習生が特定技能に移行すると実習生の外国人は日本での長期的な就労が可能になります。企業はせっかく仕事を覚えた実習生により長く働いてもらうことができます。
日本人でも3年以内の離職率の高さは課題となっています。せっかく採用してもすぐに辞めてしまう人が多いという状況下、長期で人材を確保することができる点は人材確保が課題となっている企業にとっては大きなメリットになります。
技能実習から特定技能に移行することで、労働者は技能実習生時代よりも高い賃金を得ることができるようになります。これは実習生にとってはメリットですが企業側にとってはデメリットの側面もあります。
技能実習生は実習期間中に日本の生活環境を経験できますが、帰国後に再度日本での就労を希望する場合には、再び日本での生活環境を整えなければなりません。特定技能に移行すれば、実習生期間の生活環境をそのまま維持できます。
ただ、移行は簡単にできるわけではなく前述のとおり一定の条件を満たす必要があります。移行には申請手続きが必要であり、手続きには時間と労力がかかる点は企業にとってデメリットといえます。
実習生側では移行が可能な特定分野が限定されているため、技能実習生とは仕事内容や労働環境が変わることがあります。
まとめ
技能実習から特定技能に移行するには煩雑な手続きはあるものの総合的には企業と労働者双方にメリットがあります。長く働き続けることができるようになることで労働者はよりよい報酬を安定して受け取ることができるようになりますし、企業は人材を確保しておくことができます。
こちらで紹介した内容も参考に、技能実習と特定技能の制度を上手に活用してください。