これから特定技能の外国人を雇用するときに気になるのが、雇用人数の上限ではないでしょうか?経営計画に沿って雇用人数を想定していても、人数に上限が設定されていると計画に支障をきたしてしまいます。多くの企業にとって、何人まで雇用できるのか気になるところです。本記事では、特定技能の人数に上限はあるのかどうかについて解説します。
受け入れの人数に制限はある?
結論から述べると、特定技能の人数に企業ごとの受け入れ上限はありません。
似たような制度である技能実習の1号では、「常勤職員の総数が301人以上の場合、常勤職員総数の1/20」「常勤職員の総数が30人以下の場合、3人」など、受け入れられる実習生の人数は限られていました。
一方の特定技能では、企業側が求めている採用基準に達しており、企業が採用を求めてさえいれば、制限なく多くの外国人を雇用できます。
慢性的な人材不足に悩んでいる企業や、外国人労働者を積極的に活用したい企業にとっては、特定技能の利用が大きなメリットとなるでしょう。
ただし、12の業種(旧14種)のうち、介護と建設に関しては受け入れ可能な人数に制限が設けられています。
介護の人数制限
介護では事業所ごとに勤務している、日本人等の常勤介護職員の総数が受け入れ可能な人数の上限です。
たとえば、日本人等の常勤介護職員が20人いる場合は、20人までの特定技能外国人を雇用できます。
注意すべき点は、日本人等の「等」の部分です。
日本人だけではなく、「日本の介護福祉国家試験に合格した、EPA介護福祉士の外国人」などに該当する外国人が対象です。
しかしその一方で、技能実習生・EPA介護福祉士候補者・留学生などは「等」に含まれません。
建設の人数制限
建設の場合は企業で働く常勤職員の人数を超えて、特定技能1号と特定活動の在留資格で働く外国人を雇用してはいけません。
たとえば、企業の常勤職員は社長一人だけで、残りは短期労働者のみで業務を回している場合、雇用できる特定技能1号の外国人は1人だけです。
常勤職員には外国人建設労働者や特定技能1号の外国人、技能実習生は含まれません。
建設業では過去に、技能実習生が失踪する問題が浮き彫りとなりました。外国人労働者の就労管理を適切に行う必要があるため、受け入れ可能な人数を制限しています。
実際の受け入れ人数の現状
介護と建設の分野を除いて、特定技能では受け入れ可能な人数に制限が設けられていません。
しかし、日本政府は制度が設立された2019年からの5年間で、全体の受け入れ可能人数を34万5,150人としています。
分野ごとの受け入れ目標人数と、2022年3月末時点における実際の労働者数は次のとおりです(左側が目標人数、右側が実際の労働者数)。
・介護:6万人/7,019人
・ビルクリーニング:3万7,000人/839人
・素形材産業:2万1,500人/3,928人
・産業機械製造業:5,250人/6,021人
・電気・電子情報関連産業:4,700人/3,258人
・建設業:4万人/6,360人
・造船・舶用工業:1万3,000人/1,971人
・自動車整備:7,000人/986人
・航空業:2,200人/49人
・宿泊業:2万2,000人/124人
・農業:3万6,500人/8,158人
・漁業:9,000人/718人
・飲食料品製造業:3万4,000人/2万2,992人
・外食業:5万3,000人/2,312人
分野によって、目標人数と実際の労働者数に大きな開きがあるとわかります。
たとえば、ビルクリーニングは目標人数3万7,000人に対して、実際の労働者数はわずか839人です。
充足率は約2%に過ぎません。一方の産業機械製造業では、すでに実際の労働者数が目標人数をクリアしています。
すべての分野の合計で34万5,150人を上限としてはいるものの、今後の人手不足の状況次第では、受け入れ可能人数はさらに増える可能性があるでしょう。
1号特定技能で5年経つとより高度な資格に変更できる
特定技能は大きく1号と2号の2つに分けられます。1号は在留期間が通算5年までですが、2号には上限がありません。
更新し続ける限り、日本に在留できます。また1号では家族の帯同が認められていませんが、2号は認められています。
1号を取得してから5年間就労し、その後に技能試験に合格すれば2号への移行が可能です。
ただし、2023年4月時点では建設と造船・船用工業の2分野にしか、2号はありません。
今後は他分野の追加が検討されています。また2号には、熟練した技能が求められる点にも注意しなければいけません。
たとえば、建設では他の技能者を指導したり、工程を管理したりするなど、高度なスキルが求められるでしょう。
2号へ変更できると在留期間に制限がなくなり、また永住権取得に向けたルートにもつながります。
まとめ
介護と建設の分野を除いて、特定技能の受け入れ人数に上限はありません。企業側に雇用の意思があり、また外国人に十分なスキルがあると認められる限り、人数を気にせずに雇用できるのは大きなメリットといえるでしょう。ただし、特定技能1号では外国人支援が必須のため、多方面でのサポートが求められます。企業に変わって支援してくれる機関があるため、上手に活用するとよいでしょう。