
今後労働力人口が減少傾向にある日本では、外国人技能実習生の雇用を積極的に推進すべき課題です。現実的には言語での意思疎通が図りにくいことや文化の違いなどで、日本人同士では起こらない問題が起きることがあります。ここでは、技能実習制度と実際に起きている問題、問題の起こる理由や解決方法、防止策などについてご紹介します。
技能実習制度の現状と実際に起きている問題
実際にどのような問題が起きているのか見ていきましょう。
賃金関連
技能実習生は2か月間の講習後、受け入れ先に雇用されます。この段階で日本の労働関係法令が適用されることになります。技能実習制度においても、最低賃金以上で労働時間は週40時間までとされていますが、実際には守られていないケースが多発しています。
受け入れ先の勤務記録やタイムカード改ざんなど悪質な事例も報告されています。
ハラスメント
実習生に対する暴行や脅迫などのパワハラやセクハラ、パスポートや在留カード、通帳などを取り上げるといった人権侵害も起きています。経営陣が気づかないところで暴力がふるわれているケースもあります。
また、怪我をしても治療を受けさせない労災隠しや危険な場所で働かせる安全基準違反など虚偽報告も相次いで起きています。
失踪
職場での指導が厳しすぎたり暴力をふるわれたり、低賃金であることなど労働環境の劣悪さに耐えかねて失踪する技能実習生が多いです。技能実習生は転職が認められていないため、原則的に3~5年は同じ企業で働きます。
待遇が悪くても転職ができないことで失踪するケースも増えています。
生活トラブル
低賃金による経済的な困窮が原因で起きる窃盗事件が後を絶ちません。また、同じ国出身者同士でトラブルになったり、犯罪に誘われたりして事件に発展することもあります。
自国の規則と異なることから交通ルールがわからない実習生が事故を起こすケースも多く、生活習慣に慣れていないことで近隣住民とトラブルになることもあります。
なぜ技能実習生の問題が出てしまうのか
どうして技能実習生に関する問題が起こってしまうのでしょうか。
意思疎通
言語の壁により意思疎通がうまくいかないということが原因のひとつです。技能実習生の多くは来日前に日本語を勉強しますが、日常会話レベルの日本語が話せる程度なので、仕事に関連する専門用語を含む会話を理解するためには時間が必要です。
受け入れる側の場合、できるだけわかりやすい簡単な言葉に言い換えるなどして意思の疎通を図る努力が大切です。
相談相手
来日してすぐの技能実習生は言葉だけでなく異国である日本の文化やルールに慣れるまで時間がかかり、不安を感じることが多いです。
仕事のことだけでなく日常生活においてもさまざまな疑問や不安が尽きないなか、相談できる相手がいないことで孤立してしまうケースが多いです。
実習生間のトラブル
同じ国から来ている実習生は同じエリアに住んでいたり、プライベートも一緒に過ごしたりすることが多いため、恋愛や金銭などさまざまな問題が起こりがちです。仲間が限られていることで悪い仲間に誘われても断れず、犯罪に加担してしまう可能性もあります。
問題の解決方法と今後のための防止策
技能実習生の問題解決の方法と今後同じことが起こらないためにできることについて見ていきましょう。前提として、外国人技能実習生を日本人と差別してはいけません。法にのっとって最低賃金を守り、残業代も支払う必要があります。
相談先の確保
仕事に関することだけでなく、生活全般について受入れ企業内で相談できる相手がいるのがベストですが、いない場合には外部に相談先を用意することで実習生が働きやすい環境を整備できます。
また、日本の言語や文化について学べる機会を作り、理解を深めてもらうことも意思疎通に役立ちます。
業務外のコミュニケーション
実習生の母国の習慣や文化、考え方について紹介する機会を作ったり、文化の違いについて話し合う機会を持ったりすることでお互いの理解が深まります。交流会を開催してプライベートでのコミュニケーションを図ることが業務の効率化にもつながります。
労働環境の見直し
技能実習生を受け入れるにあたって、社内の安全対策を見直し、実習生にも理解できる規則を整備する必要があります。日本人社員向けに外国人労働者との接し方などの研修を行うことも重要です。
まとめ
日本人を雇用しても経験や年代、考え方などの違いで摩擦や問題は起きます。外国人であればなおさら文化の違いや言語の壁などで摩擦が起きがちです。
今後、労働力として日本にとって必要不可欠なそんざいである外国人技能実習生をしっかりとサポートし、問題が発生してもすぐに相談できる大切を整えることが受け入れ企業に必要なことです。
問題が起こる前にできるだけ防止策をとって、すべての従業員が等しく働ける快適な環境を作りましょう。