
特定技能制度を活用した人材採用は多くの企業にとって欠かせない手段となっています。しかし、実際に特定技能外国人を採用する際には、在留資格や雇用契約、支援業務に関する「期間」の理解が極めて重要です。本記事では、特定技能制度における基本から人材紹介の流れ、契約更新や支援継続の注意点まで、実務に直結する情報を解説します。
特定技能制度における在留期間の基本ルール
特定技能制度は、深刻な人手不足に対応するために2019年に創設された制度で、外国人が一定の専門性・技能をもって日本で就労できる在留資格を与えるものです。この制度には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類が存在し、それぞれで在留期間や更新条件が異なります。
まず、特定技能1号については、比較的初期段階の外国人材に対する資格で、在留期間は4か月、6か月、または1年ごとの更新が可能です。ただし、これには上限があり、通算で最大5年間までの在留に限られます。
そのため、企業側は契約時にこの制限を念頭に置いておく必要があります。一方、特定技能2号は、1号で一定期間の実務経験を積んだうえで、さらに高度な技能を有することが認められた外国人に与えられる在留資格です。
こちらの在留期間は6か月、1年、3年のいずれかで更新が可能ですが、特筆すべきは更新回数に制限がないという点です。つまり、条件を満たし続ければ長期的な在留・就労が可能であり、将来的には永住の道が開かれる可能性もあるため、企業にとっても安定的な人材確保の選択肢となります。
このように、同じ特定技能制度内でも在留資格の種類によって大きく異なる期間管理が求められるため、制度設計や人事計画の段階で正確な情報を把握しておくことが欠かせません。
人材紹介における各フェーズの期間をチェック
特定技能外国人の採用プロセスは、単に人材を紹介してもらうだけでは完結しません。採用から就労開始まで、そして契約期間中の支援体制にいたるまで、いくつかのフェーズを踏みます。
そしてそれぞれのフェーズには、特有の「期間」が存在することを理解しておく必要があります。まず注目すべきは採用から就労開始までの所要期間です。
これは人材の居住地によって大きく異なります。国内在住の外国人材を採用する場合、すでに在留資格を保持していることが多く、書類の手続きや審査が比較的スムーズに進むため、1~2か月程度での就労開始が期待できます。
一方、海外在住者の場合は、在留資格認定証明書(COE)の申請、交付、ビザ発給、渡航手続きなど多くのステップを経る必要があるため、おおむね3~6か月程度の準備期間が見込まれます。とくに繁忙期や行政手続きが混雑する時期には、さらに長引く可能性もあります。
採用計画は余裕をもって立てることが重要です。次に重要なのが雇用契約の期間です。
原則として、特定技能1号・2号いずれも在留資格の有効期間と同一期間で契約を結ぶ必要があります。すなわち、4か月・6か月・1年・3年といった単位での契約締結が一般的です。
企業としては、契約終了前に在留資格更新の手続きを見越し、継続雇用の意向がある場合には、早めに本人と更新内容について確認しておくべきでしょう。また、見落とされがちなのが、登録支援機関との契約期間です。
特定技能1号の外国人を受け入れる企業は、原則として登録支援機関と契約を結び、支援計画にもとづいたサポートを継続的に提供しなければなりません。この支援契約も、在留資格や雇用契約と連動しており、外国人の在留期間中は継続して有効である必要があります。
支援の開始や更新時期が雇用契約とズレないよう、スケジュール管理が求められます。
契約更新や支援継続のポイントと注意点
特定技能制度を活用するうえで、多くの企業が直面するのが「更新」のタイミングに関する対応です。在留資格や契約の期間は定期的に更新を要するため、スムーズに更新が行えなければ、最悪の場合、就労が中断される事態にもなりかねません。
まず、在留資格の更新は、満了日の2~3か月前から手続きが可能です。更新には、引き続き雇用する意志があること、本人が業務を継続できる状態にあること、そして支援計画が適切に実施されていることが求められます。
行政への提出書類には、契約書や勤務状況報告、支援記録などが含まれるため、日頃からの記録管理がカギとなります。雇用契約の更新については、在留資格の更新と並行して行うケースが一般的ですが、内容の見直しも必要です。
業務内容や待遇に変更がある場合、それが適切に在留資格の範囲内であるかどうかを確認し、トラブルを未然に防ぐことが重要です。とくに特定技能2号への移行を検討する際には、本人の技能試験や実務経験の証明も求められるため、事前の準備が必要不可欠です。
最後に、登録支援機関との契約更新・継続にも注意が必要です。支援機関が提供する支援内容が不十分である場合、企業側の監督責任を問われることもあり得ます。
また、支援機関の変更を行う場合にも、移行期間中の支援の空白が生じないよう配慮が必要です。継続的な支援体制の確保は、外国人労働者の安心にも直結するため、企業として誠実に対応することが求められます。
まとめ
特定技能外国人の採用は、単なる人材紹介ではなく、在留資格、契約内容、支援体制といった多層的な制度の理解と、正確なスケジュール管理を伴うプロセスです。在留資格の種類によって異なる在留期間、国内外の採用ルートによる手続き期間の違い、雇用契約や支援契約の更新タイミングなど、すべてが連動していることから、ひとつの要素が遅れることで全体の流れが滞るリスクがあります。そのため、制度に精通した登録支援機関や人材紹介会社と連携しながら、常に最新の情報にもとづいて運用することが、特定技能制度を成功させる最大のポイントです。外国人材が安心して働ける環境を提供し、企業の戦力として長期的に活躍してもらうためにも、「期間」を正しく把握し、実務に生かす視点をもつことが何より重要です。